【奈良ひとり旅】受け継がれてきた歴史に感動する、東大寺散策+第74回正倉院展
一路京都から移動し、奈良の地に降りたったかならくん(京都旅行の模様はこちら)。
目当ては奈良国立博物館で開催中だった正倉院展。ついでに東大寺観光もしよう! ということで、小雨の中、奈良の大地に繰り出しました。
・東大寺観光MAP
正倉院展はコロナ禍ということもあってか、事前予約制(会場でのチケット販売はなし)。
東大寺の正面玄関は南大門(マップの⑤)なのですが、正倉院展の入場時間(12−13時)までの時間を潰さなければならないということもあって、敷地の北端に位置する正倉院、東大寺の順に散策していきました。
・東大寺散策
①正倉院(正倉・外構)
写真ではなかなか伝わりにくいのですが、こちらの正倉院・正倉、かなりでかい(周りに生えている木と見比べてもらうとなんとなく大きさが把握できるかも)! そこいらの神社仏閣ではたちうちできないほどの大きさです。
しばらく眺めても飽きないくらい美しい造りに、はえー、と見入り、しばらく経ってから松の木のそばの警備員に初めて気づいて静かにビクッとなった。さすが宮内庁管轄。
柱がだんだん足に見えてきて、夜中に動きだすんじゃないか、なんて考えてしまった。
②大仏殿
外見も中身も笑っちゃうくらいでかい! 正倉院もそうだけれど、これが権力の力かー。柱のひとつひとつを見ているだけでも機能美と時の長さを感じられてしみじみ楽しい。
無数に出入りを繰り返す修学旅行生の歓声が反響する大仏殿内。スマホのシャッター音やら外国人旅行者の話し声やらを耳にしながら大仏を見上げていると、自分がどこにいるやら、だんだんわからなくなってくる。
大河ドラマに登場しそうな朱塗りの廻廊! なんとなく『彩雲国物語』の世界観を思い出してテンションが上がりました。出口に続く南側の廻廊にはお土産やさんがあった。
大仏殿を後にして、東のなだらかな丘を登っていく。
③鐘楼
小学生たちのウォークラリーのチェックポイントになっていた鐘楼。こちらの鐘は東大寺創建当初のもの(なんと国宝!)。毎日20時に撞かれているらしい。日本三名鐘の響き、ぜひとも聞いてみたい。
④二月堂
ビルの3階分ほどの高さをゼーハー言いつつ歩いてのぼると、奈良の街が目の前に、ぱーっと開ける。
⑤南大門
修学旅行生の集合場所となっているのか、南大門の麓は見渡す限りの人、人、人。そしてそれをカモにしようとする鹿たち。襲われる学生たちの悲鳴……
そして肝心の南大門は、カオス極まる地上の様子にも負けない迫力がありました。風雨によって装飾が剥げているのがかえっていい! これが人の手で組まれたと思うと惚れ惚れする。
・第74回正倉院展
⑥正倉院展(奈良国立博物館)
正倉院展の入場時間が迫り、東大寺を出て、奈良国立博物館へ。正倉院を模していると思われる建物の足元には遠くからでもわかる人だかりが。
とても平日とは思われない賑わいに、建物外に建てられた仮設ロッカールーム、食事や土産物を販売する屋台が複数あったりと、普通の展覧会とは一線を画す様相に、なんだか緊張。
落ち着いて見られるかしらと、そわそわしながら会場入りを果たしたのですが……
飛鳥時代に宝物庫におさめられた物品の数々を目にするのは、人混みの煩わしさを吹き飛ばしてあまりある面白さ!
物品の物珍しさは言うまでもないのですが、なんといっても、今目の前にある宝物の数々は、西暦700年代から現代までの長い時を越えてきたのだ、と一度認識したが最後、その事実の途方もなさに打ちのめされた。
収蔵品の中でも、繊維質の衣装やタペストリーは保存が特に難しいらしく、擦り切れて、ギリギリそれとわかる形を保っている衣類などを見ると、それの価値を信じ、現代まで連綿と受け継いできた幾人もの人の意思の現れのように思えて、知らず胸が熱くなる。
煌びやかな装飾品を眺め、使用したのは貴族など、位の高い人物だろうが、これらを設計し、作り上げた職人、彼らが口にする農作物を育てていた人物などももちろんいたんだよなあ。歴史に色がついていくような、不思議な感覚を味わった。
・まとめ:古いは、新し、面白し!!
実は当初の予定では奈良に行くつもりはなかった(宇治を観光しようと思っていた)。
なぜ予定を変更したかといえば、知人の「京都にいるなら、奈良の正倉院展に行ってみれば?」という何気ない一言。
京都と奈良は一泊二日の旅行で行き来するには、決して近くはない距離……(加えて私の体力は並以下)。一瞬迷いはしたけれど、旅行中に得た情報にはしたがっておくのが吉である。というわけで、一路南へ舵をきったわけだったのだけれど、結果的に面白い経験ができました。自分の勘、これからもどさどさアテにしていこう、うん(東大寺も国立博物館も、それはもう広くて、帰る頃には体力限界ギリギリでした)。
以前に法隆寺には足を運んだことがあるとはいえ、まだまだ奈良を知り尽くしたとはとても言えない。晴れていたら、鹿たちに鹿せんべいも振る舞ってみたいし、若草山も気になるし。次回は奈良メインで旅をしてみたい。
・本日のお隣本
- 高田崇史『采女の怨霊 小余綾俊輔の不在講義』
奈良行きが決まった時、一番はじめに思い出した一冊。奈良の猿沢池の畔に鎮座する春日大社の末社を巡る謎を紐解いていく歴史ミステリーで、中秋の名月の頃に行われる采女祭のシーンが印象的。これを書くとなって自分でつけている読書記録を確認してはじめて気づいたのですが、私、小説の舞台となる興福寺そばの猿沢池と、東大寺・大仏殿そばの鏡池をすっかり混同しておりました……。鏡池にもそれらしい社があったものだから、てっきりそうだと思って興奮したりなんかしちゃったりして……(鏡池にあるのは厳島神社の社でした)。次回奈良に行く時にはぜひ猿沢池を見に行かねば。 - 周防柳 『蘇我の娘の古事記』
授業で習う歴史には興味がもてなかったなーという人におすすめの一冊。時代は蘇我氏が討たれてより数年の頃。国史編纂という大事業を、ひとりの少女の人生とともに物語っていく。史実かどうかはともかく、古事記という遠い時代の書物にも作者があった、色んな思惑が絡み合って編纂されたのだ、と遠い時代の出来事に手触りをもってふれられるので楽しい。
*時代を下って、古事記の研究に力を入れた徳川光圀(水戸黄門)について知れる冲方丁『光圀伝』もあわせて読むと、古事記の解像度がさらに上がります。 - 森見登美彦『太陽と乙女』
もっとライトに、現代の奈良を知るには森見登美彦のエッセイがうってつけ。歴史的建造物だけでない、ニッチでディープな奈良について語る森見登美彦氏のどこかとぼけた文章を読んでいると、思わずクスっと笑ってしまう。私は特に本著の第4章『ならのほそ道』の中の生駒山上遊園地の話が好きだ。こちらのカフェテリアが森見氏とっておきのボンヤリ・スポットであるらしい。わざわざこちらでメロンソーダを飲むためだけに生駒山を登るのが、私のちょっとした夢のひとつである。
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